「最近、パフォーマンスが下がっている気がする……もしかしてオーバートレーニング症候群ってやつかな?」
「オーバートレーニング症候群にはどんな症状があるんだろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
オーバートレーニング症候群とは、スポーツやトレーニングなどによって生じた生理的な疲労が回復しないまま、積み重なることで起こる慢性的な疲労状態のことです。
オーバートレーニング症候群に陥ると、トレーニングを続けていてもかえってその効果や競技の成績が落ちてしまいます。
この記事ではオーバートレーニング症候群の症状や簡単なチェック方法、予防のポイントをご紹介します。
パフォーマンスの低下を招いてしまわないためにぜひ参考にしてくださいね。
1.オーバートレーニング症候群とは?
「オーバートレーニング症候群ってどんなものなんだろう?」
オーバートレーニング症候群は、スポーツやトレーニングの実施などで生じる生理的な疲労が回復しないまま蓄積することで起こる慢性的な疲労状態のことです。
まずはオーバートレーニング症候群について詳しくご説明しましょう。
1-1.オーバートレーニング症候群の原因
オーバートレーニング症候群は負荷の大き過ぎるトレーニングに加え、疲労回復に必要な休息や栄養素が不足することで起こります。
スポーツトレーニングによる効果は日常の身体活動より負荷の大きい運動をすることによって生じますが、負荷が大きくなり過ぎると効果や競技の成績がかえって低下してしまうのです。
これは肉体的・精神的なストレスによって、脳の「視床下部」や「脳下垂体」と呼ばれる部位から分泌されるホルモンのバランスが崩れることによるものだと考えられています。
1-2.オーバートレーニング症候群の症状
オーバートレーニング症候群の症状は非常に多岐にわたります。
代表的なのは、競技成績の低下や疲れやすさ、全身の倦怠(けんたい)感です。
集中力の欠如や睡眠障害、食欲不振などの症状も現れます。
また安静時の心拍数や血圧の上昇が見られたり、運動後に安静時の血圧に戻るまでの時間が長くなったり、体重が低下したりする場合もあります。
単なる疲れでは済ませることのできないさまざまな症状が現れるのですね。
2.オーバートレーニング症候群のセルフチェック方法
「最近疲れやすいような気がするけどもしかしてオーバートレーニング症候群かな?」
このように不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
オーバートレーニング症候群は早期に発見し対応することが非常に重要です。
オーバートレーニング症候群を早期発見するには、起床時の心拍数が目安になるといわれています。
疲労症状が強くなるにつれ起床時の心拍数が増加するといわれているのです。
日頃から起床時の心拍数をチェックしておくと良いかもしれませんね。
心拍数の上昇が見られるなど不安な場合はトレーニングや練習を中止し、専門外来に相談するなどしましょう。
3.オーバートレーニング症候群予防のポイント
「オーバートレーニング症候群を予防するためにはどうしたら良いんだろう?」
オーバートレーニング症候群になってしまうと練習やトレーニングを長期的に中断しなければならなくなってしまう恐れもあります。
そのような事態にはならないように、しっかりと予防しておきたいものですよね。
ここではオーバートレーニング症候群を予防するためのポイントをお伝えしましょう。
ポイント1 十分な休息をとる
オーバートレーニング症候群はその名のとおり、トレーニングやスポーツによる負荷が大き過ぎることによって起こります。
予防のためにはまず十分な休息をとることが重要だといえるでしょう。
体調が悪いときは無理をせず、トレーニングのメニューや負荷を変更したり、トレーニング時間を短くしたり、トレーニングを中止したりといった判断を適宜下しましょう。
また筋トレを行っている場合、同じ部位のトレーニングを毎日続けて行うことは避けておきましょう。
筋トレを行うと、筋肉を構成する筋繊維の一部が傷つけられ破断します。
傷つけられた筋繊維は回復すると元よりも少し太くなるという性質があります。
これを「超回復」といい、筋トレはトレーニングによる筋繊維の破断と超回復を繰り返すことで筋肉量や筋力の増強を目指すトレーニングであるといえます。
超回復には2〜3日かかるといわれており、同じ部位の筋トレはこの間休んだ方が良いと考えられているのです[1]。
特に筋肉痛のあるときは休息をとることが重要だといわれています。
筋肉痛のある状態でトレーニングを続けると、筋肉の正常な回復を妨げるだけでなくトレーニングの効率も低下してしまいます。
毎日練習やトレーニングを行わないと不安、という方もいらっしゃるかもしれませんが、休息をとることも効率の良いトレーニングには重要であることを理解し、十分に休むようにしましょう。
ポイント2 十分な栄養を摂る
オーバートレーニング症候群予防のためには、十分な栄養を摂ることも重要です。
日常的にトレーニングを行っている方のなかには、たんぱく質を意識的に摂取しているという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
たんぱく質は体のエネルギー源となる他、筋肉や臓器、肌、髪の毛などの材料となる栄養素です。
またホルモンや酵素、抗体など体の機能を調節する成分を構成するはたらきもしています。
せっかくトレーニングを行っても筋肉の材料となるたんぱく質が不足していては筋肉が十分に育たなくなってしまうため、しっかりとたんぱく質を摂っておくことが重要なのですね。
厚生労働省はたんぱく質の1日当たりの推奨摂取量を以下のように設定しています。
【たんぱく質の摂取推奨量】
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18〜29歳 | 65g | 50g |
30〜49歳 | 65g | 50g |
50〜64歳 | 65g | 50g |
65〜74歳 | 60g | 50g |
75歳以上 | 60g | 50g |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
ただし筋肉をつけたい方や運動習慣のある方はこれだけではたんぱく質が十分でないといわれており、一般的には体重1kg当たり2gのたんぱく質摂取が勧められています[2]。
またたんぱく質と並び体のエネルギー源となる炭水化物や脂質を摂取することも重要だといわれています。
これらの栄養素が不足していると、エネルギー不足のために筋肉が分解されてしまう恐れがあるのです。
筋肉が落ちてしまうとパフォーマンスの低下につながるので、しっかりと炭水化物や脂質を摂取しておきましょう。
また体の調子を整える13種類のビタミン、16種類のミネラルなどの栄養素も摂取が欠かせません[3]。
栄養素が不足しているとさまざまな不調を招いてしまいます。
体に必要な栄養素を十分に摂取するよう心掛けましょう。
ポイント3 ストレスを発散する
オーバートレーニング症候群は肉体的・精神的ストレスによりホルモンバランスが崩れることで生じると考えられています。
予防のためにはストレスを適宜発散することも重要だといえるでしょう。
ストレス発散の方法にはさまざまなものがあります。
読書や映画、旅行、ゲームなどの趣味を楽しんだり、音楽を聴いたり、ご自分に合ったストレス発散法を見つけましょう。
おいしいものを食べたり、家族や友人、恋人などとしゃべったりするのも良いでしょう。
ぬるめのお湯につかったり、半身浴をしたりといった入浴もリラックス法として有効です。
またアロマテラピーやお香など、嗅覚を通じてリラックスするのも良いかもしれませんね。
トレーニングや練習から離れ、気分をリフレッシュしましょう。
4.オーバートレーニング症候群が疑われる場合
競技成績の低下、倦怠(けんたい)感、起床時の心拍数の増加などオーバートレーニング症候群が疑われる症状が見られる場合、まずはトレーニングや練習を中断し、専門外来を受診しましょう。
オーバートレーニング症候群の症状は他の病気の症状としても現れる場合があるため、診断の際にはさまざまな検査を行い、他の病気の可能性を否定する必要があります。
またオーバートレーニング症候群だと診断された場合、まずは完全休養が勧められます。
その後、医師と相談しながら段階的に運動量やトレーニングの強度を上げていくことになるでしょう。
オーバートレーニング症候群は重症になるほどトレーニングを中断したり、減らしたりしなければならない期間が延びてしまいます。
最悪の場合には競技に復帰することができなくなるケースもあるので、早期に発見・対応することが非常に重要です。
何か調子がおかしいなと思ったら念のため専門家に見てもらいましょう。
5.オーバートレーニング症候群についてのまとめ
オーバートレーニング症候群はスポーツやトレーニングによる疲労が十分に回復しないまま積み重なることで起こる慢性的な疲労状態です。
症状としては競技成績の低下、疲れやすさ、全身の倦怠感の他、集中力の低下や睡眠障害、食欲不振、体重の減少などが見られます。
また安静時の心拍数や血圧が上昇したり、運動後に安静時の血圧に戻るまでの時間が長くなったりといった症状もあります。
特に特徴的だといわれているのが起床時の心拍数の増加です。
疲労症状が強くなるほど起床時の心拍数が大きく増加するといわれているので、日頃から体調チェックの目安にすると良いでしょう。
オーバートレーニング症候群を予防するためには十分な休息と栄養をとること、ストレスを適宜発散することが重要になります。
またオーバートレーニング症候群になってしまった場合、まずは練習やトレーニングを中断し休養をとることが重視されます。
重症になるとその分練習やトレーニングをできない期間が長くなってしまうので、疑わしい症状がある場合は早めに専門家に相談しましょう。